『笑顔が守った命 津波から150人の子どもを救った保育士たちの実話』
あいはらひろゆき/作 ちゅうがんじたかむ/絵
サニーサイド/刊
定価1,650円(税込)
子どもを愛する気持ちは素晴らしいもの
二〇一一年 三月一一日のことでした。いつも通り、三月生れの子のお誕生会でした。楽しいお誕生会を終わり、お昼寝をさせていたら、「二時四六分」急に園内が揺れて、今までに聞いたことのない音と激しい揺れを感じたのです。
保育士さんたちは「早く、子供の所へ行かなくちゃ」とかべを伝って、やっと、たどりついたとたん、津波警報が出て、とっさの、判断で二階へお昼寝中の〇歳児を両手に抱き、何度も何度も往復して、全員避難させました。また、思い出が、いっぱいつまったアルバムも二階に上げることができました。やがて、津波が近づいてきて、茶色い泥水が園庭にあふれ、色々なものを渦を巻きながら、飲み込んでいきました。そして津波は一階を飲み込んだところで止まりました。保育士さんは子供達に津波を見せないように、カーテンをしめて、歌ったり、笑ったりして、子供を守り、自分自身も勇気がでました。所長先生も帰って来られて安心しました。元気な子供を一人ずつ、保護者に渡せたことと最後に二歳の子供をむかえに来られたお母さんが、津波に流されなかったことは本当に良かったです。
この絵本を読んで保育士さん達の、子供を愛する気持ちは、すばらしいものでした。そして、地震や津波の想像できない、おそろしさは体験した人は、一生、忘れないでしょう。その時の子供達も覚えていないと思うけれど、沢山の方から、お話を聞いていると思います。多くの方が亡くなられて、十年経った今でも、娘さんを探しに海にもぐっているお父さんもいられるそうです。
(評・福岡県八女市立黒木小学校6年 森 結々子)
(月刊MORGENarchive2021)